「部分最適」ではなく「全体最適」の視点を

概して市町村は、どうしても自分たちの街を中心とした「部分最適」の視点で都市政策に取り組みます。これは否定されることではなく、各市町村の立場からすれば当然のことです。

しかし、特に郊外や地方都市では、再開発エリアだけが人口増加の一人勝ちを続けてもあまり意味がありません。というのは、実際にタワマンがつくられても、市町村内で人口移動が起きているだけだったり、周辺自治体から流入しているだけだったりと、都市圏全体として見ると人口が増えているわけではないケースが多いからです。

つまり、今後、住宅を取得しようと考える年齢層がますます減少していく中では、限られた住宅需要に対して、都市圏の中でどうバランスをとりながら、それぞれの地域がどう持続可能な状態をキープしていくのかという「全体最適」の視点が非常に重要となるのです。

そのため、少なくとも大量の住宅供給を伴う再開発については、周辺の市町村と、開発内容や供給する住宅戸数のあり方などについて広域的に調整するための、法的な都市計画の枠組みづくりが不可欠です。

※本稿は、『2030―2040年 日本の土地と住宅』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


2030―2040年 日本の土地と住宅』(著:野澤千絵/中央公論新社)

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