「これを言わないと進めない」と…
わたしは、小倉さんと近づきたかったから、本当のことを言ってみたくなって、これを言わないと進めないぞ、と思って
「むかし、テレビでわたしのこと取り上げていたときに、小倉さんが〈このニュースどうでもいい〉とおっしゃっていて…」
と告げてみると、
ごめんなさい、と頭を下げられた。
わたしは、なんなら何十年も根に持っていたのに「全然です!」と言って、本当にそれで、全然と思えた。
小倉さんは、わたしが思う印象と違う人だった。
いつだって、人からなんらかの印象を持たれることに辟易しているのは、わたしだ。本当は優しいんですね、とか、昔より良い人になりましたね、とか、怒らないんですね。別に昔だって優しかったし、今だって怒る。「印象と違いました」という本人(わたし)への発表の時間は、ただ無になって時間が過ぎるのを待つ。
だから、印象で思い込むことは避けたいと思っているのだけど、いざ人のこととなると、テレビのほんの一面の印象で、それが彼の全てだと思い込み、「小倉さんはこんな人」と決めてきたわけだ。
話がずれたけど、わたしは小倉さんが大変好きになって連絡先を聞いた。それからご病気になられたとニュースで聞いて、いつかまた会いたいと思っていた。それは叶わなくて、訃報を目にしたとき、大きくショックだった。
小倉智昭さんに会えてよかった。
ご冥福をお祈りします。