厚生労働省が実施した「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間でメンタルヘルス不調により1カ月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は、13.5%だったそうです。会社を休むことにためらいを感じてしまう方もいるなか、産業医・心療内科医の薮野淳也先生は「今や休職は、めずらしいことではなくなっている」と話します。そこで今回は、薮野先生の著書『産業医が教える 会社の休み方』から「正しく、適切で、安全な」休み方を一部ご紹介します。(構成/橋口佐紀子)
「アブセンティーズム」と「プレゼンティーズム」
「アブセンティーズム」と「プレゼンティーズム」という言葉を聞いたことはありますか? もともとはWHO(世界保健機関)が提唱した、健康問題に起因したパフォーマンスの低下を表した指標です。健康経営の必要性が増しているなか、注目が高まっています。
アブセンティーズムは、仕事を休んでいる・欠勤している状態のこと。骨折でもメンタル不調でも、理由はなんであれ、欠勤している間は働いていませんから生産性はゼロになります。
一方、プレゼンティーズムは、何らかの不調を抱えながら働いている状態のこと。例えば女性の方の場合、生理前のPMS(月経前症候群)がつらくてその間はいつもより作業効率が下がることもあると思います。あるいは、花粉症などもそうですよね。健康上の問題を抱えたまま仕事をすると、どうしても生産性が下がります。
このプレゼンティーズムとアブセンティーズムが組織の生産性を下げ、コストを上げていることが明らかになっていて、企業や社会に対する損失額がさまざま試算されています。