歩きながらメイクをする母

鏡の前にいる母親を通り過ごし、店外へ出ると先ほどの息子がいた。そばには弟と妹らしき、未就学児らしい2人がいる。息子はさっき母親から奪ったお菓子を、2人に分け与えていた。うれしそうに食べる2人の笑顔がいまだに忘れられない。

(……ということは、なんだ? お兄ちゃんだけスーパーの買い物につきあわせて、弟と妹は外で待たせていたということ? 今日び、ワンコだって店外で待たせておくのはNGと言われる時代なのに、小さな子どもだぜ……?)

実はこの親子に遭遇したのは、酷暑だった今年の8月のこと。炎天下の昼間に子どもを長時間置き去りにしていたなんておかしい。よく車内に子どもを放置して、パチンコに興じる親のニュースを聞くけれど、私からするとどちらもそう変わらない。むしろ、”連れ去り”の心配はしないのだろうか。あまりのことを目撃したショックで帰れなくなり、私がスーパーの前で立ち止まっている間に背後から母親が退店してきた。

スマホで誰かと甘ったるい声で会話をしている。電話を終えると今度はバッグから、ファンデーションのケースを取り出して、頬にパフを当てながら歩き出した。歩きながらメイクしている女性なんて、まだ日本にいたのか。

メイクしながら歩く母親に、3人の子どもがついていった。お兄ちゃんが妹の手を引いている。スーパーの購入品に、バッグに、ファンデーションケースに、パフ。両手がふさがった母親は子どもたちに一瞥もせず、スタスタと歩いていくだけ。彼らは親子なのだろうか? ああ、でも「産まなきゃ良かった!」って言っていたっけ。