一般大衆向けの『一目千本』
さて、この本を遊郭内でだけ取り扱っていたら、耕書堂の売り上げはあまり上がりません。みんなが欲しがる本でも、それだけでは市場規模が小さ過ぎたのです。『一目千本』の人気を鑑みた重三郎は、この本を一般大衆向けにも出すことにしました。
とはいえ、同じ本を出したら、希少価値が下がるし、何より不公平です。そこで、内容を変えることにします。
大胆にも、お花の絵だけを載せて、その横に添えられていた遊郭と花魁の名前をとってしまったのです。
それでも、これまで話題になっていたという下地があったので、一般大衆たちはこぞって『一目千本』を手に入れたということです。
※本稿は、『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(興陽館)の一部を再編集したものです。
『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(著:ツタヤピロコ/興陽館)
辣腕編集者であり天才出版人、蔦屋重三郎。
江戸・吉原に生まれた一人の男はいかに生きて、出版業界の礎を築きあげていったのか。
生きざま、ビジネス、才覚、そのすべてがわかる本。