添えられた言葉の意味は……

実は、これは遊女を美しい花にたとえて紹介している絵本なのです。

**屋の**は牡丹のように華やかで美しいですよ。**屋の**は木蓮のように匂い立つような色っぽいお姉さんですよ。**なんて真っ白な百合の花のように気高い雰囲気でイケてます。

『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(著:ツタヤピロコ/興陽館)

といったように、人気遊女の特徴を花で表してみたのです。考えたものですよね。いまのように写真で紹介することができないから、お姉さんたちの雰囲気を精一杯伝わるようにかいたのです。

人はミステリアスなものに惹かれるものです。『一目千本』を手にとった人たちは、その抽象的な説明に、妄想が大きく膨らみました。結果、吉原への興味がいっそう掻き立てられることとなったのです。こうして『一目千本』は集客へとつながっていきました。

異色の遊女紹介本である『一目千本』は、遊郭や遊女のあいだでも評価が高いものでした。自分たちをきれいなお花にたとえて紹介してくれるなんて、素敵。粋だわ。といった具合です。