法の抜け穴
幕府は自分たちにいいように情報統制をしようとしますが、ここで片手落ちします。なんと、地本問屋に限って、仲間をつくらせることを命じなかったのです。これは、しくじりました。
もともと娯楽色の強い地本です。規制してくるたんこぶがないとなれば、完全に書きたい放題。次から次に幕府に対する風刺や批判が書かれた本が出版されるようになってしまいます。当たり前です。法の抜け穴ってこういうことをいうんですよ。
大衆は大喜びです。地本は面白いとなり、人気はますます高まって行ったのです。
蔦屋重三郎が耕書堂を開いたのは、ちょうどこの頃になります。時代の流れを読み、そこに「素早く」乗ったことも重三郎の才覚の一つだったのではないでしょうか。
※本稿は、『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(興陽館)の一部を再編集したものです。
『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(著:ツタヤピロコ/興陽館)
辣腕編集者であり天才出版人、蔦屋重三郎。
江戸・吉原に生まれた一人の男はいかに生きて、出版業界の礎を築きあげていったのか。
生きざま、ビジネス、才覚、そのすべてがわかる本。