1月5日から、2025年NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の放送がスタートしました。横浜流星さん演じる本作の主人公は、編集者や出版人として江戸の出版業界を支えた“蔦重”こと蔦屋重三郎です。重三郎とは、いったいどんな人物なのでしょうか?今回は、書籍『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』をもとに、重三郎マニアの作家・ツタヤピロコさんに解説をしていただきました。
江戸時代の出版業界
蔦屋重三郎が活躍する前、江戸の出版業界はあまり大きな市場ではありませんでした。これは、経済や文化が京都や大阪を中心とした上方に集中していたためです。
出版業も上方のほうが断然栄えていて、江戸にある本屋は、上方資本のものか、上方の本屋の支店ばかりとさみしいものでした。
そもそも、日本における「本」は、江戸初期に京都でつくられ始めたものなので、もっともな話ではあります。
それ以前ももちろん本はありました。でも、それは自分たちでつくって出版していたものではなく、仏教について書かれた海外産のものです。
娯楽色はほぼなく、お堅い内容一辺倒のものでした。普通の人は手にとることもなく、持っているのは寺社や公家の貴族だけです。
どうしても読みたい場合は、持っている人たちに頼んで見せてもらい、内容を自分で書き写す必要がありました。こんな具合ですから、江戸の一般大衆には、縁がありませんでした。