ますますチョイスが難しくなっている
また、1本目と2本目とでスタイルを変えるかどうかも、大きなテーマです。
僕らのころは、同じスタイルで続ける「2階建て」が常とう手段でした。2008年のM-1でも、NON STYLEは「太ももを叩いて自分を戒める」というスタイルの2階建てにしました。
ただ、今は本当にいろいろな漫才のスタイルがあって、お客さんにも「次はどんな新しいことを見せてくれるのか」という期待があります。つまり、どんどん自分の「新しさ」を更新していく必要があるわけです。
しかも、辛抱強くテレビを見なくてもいいサブスク全盛時代の特徴として、お客さんの「飽きる速度」も早くなっている。そうなると、正直、2階建てが得策かどうかわかりません。
2023年の決勝でも、令和ロマンは2階建てではなかったけど、ヤーレンズは2階建てでした。一概にどちらがいいとはいえない。ますますチョイスが難しくなっているとしかいえません。
もし、2023年のM-1決勝にNON STYLEが出ていたら、どうしたでしょうね。1本目で最終3組に残ることができたら、2本目ではガラリとスタイルを変えるかもしれません。
でも僕は自分のボケの弱さをわかっているので、やっぱり2階建てにして畳み掛けるかな。あるいは今現在のネタの作り方で行くなら、2階建てなんてことすら考えずに、システムなんかない、ひたすらくだらないネタ2本で行くかもしれません。
※本稿は、『答え合わせ』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。
『答え合わせ』(著:石田明/マガジンハウス新書)
本書は、漫才に対する分析が鋭すぎて、「石田教授」とも呼ばれている石田明さんが「漫才論」について語り尽くした一冊。「漫才か漫才じゃないかの違いは何か?」といった【漫才論】から、「なぜM-1ではネタ選びを間違えてしまうのか?」といった【M-1論】まで、漫才やM-1にまつわる疑問に「答え」を出していきます。読むだけで漫才の見方が一気に「深化」する新たな漫才バイブル、ここに誕生!