命の恩人

遠のく意識のなか、聞こえたのはコッコちゃんの声。異変を察知した彼は、名前の通りコッコ! コッコ!と鳴き喚き隣家へ侵入、何ごとかと出てきた隣人が119番通報をし、一命を取り留めた。コッコちゃんは救急車の到着まで彼女のそばにぴったり寄り添っていたという。

「助かってよかったですね」と私が言うと、「ちょっと麻痺が残ったけどね。だから最近はヘルパーさんにきてもらっているの」と言う。

「そうなんですね」「それが、コッコはその方を嫌いなのよ。ヤキモチを焼いているのね。ヘルパーさんを追いかけて突っついたり、頭の上を飛んだり……困っちゃうわ」ため息をつきながら、コッコちゃんを抱っこしている写真を見せてくれる。

「……でもね、命の恩人なのよ」もう一度そう言って、目を細めるのだった。


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