驚くべき月へのこだわり
演出面のこだわりは、月の描写にも。
実際にはなかなか出会えないため、月を眺めながら、互いに心を通わせているまひろと道長。月が重要なアイテムになるということで、スタッフが毎日のように撮影に出かけて、薄雲がかかった月や、満月が雲に隠れる瞬間など、さまざまな月の映像を撮りためていたとか。
「まひろのお母さんが殺されたときも、月を見つめる二人を描くなど、1話から月にこだわっていました」と大石さん。実は、月が登場するシーンには、大石さんを驚嘆させる演出があったそうです。
「資料が残っていて、何月何日の出来事だと、きちんとわかっているシーンでは、その日の暦のとおりの月の形にしていたんです。なんとなく満月とか、三日月とかじゃないんですよ。1000年前のその日の月齢を調べて、それと同じ形の月の映像を使っていた。こういうところがNHKのすごさだなぁと、ほんとうにびっくりしました」
『光る君へ』で道長が「望月の歌」を詠むシーンが放送された前日、「平安時代に藤原道長があの歌を詠んだ夜と、ほぼ同じ満月が見られる」ということが話題になりました。「道長と同じ満月を見よう」などとネット上で盛り上がりましたが、なんとドラマでは、「平安時代のあの日と同じ月」が、さまざまなエピソードでさりげなく再現されていたのです!
誰も気づかないような部分にも、とことんこだわる。そんな姿勢と努力が、見る人の心に残る名作を生んだのでしょう。
そして最終回の放送日も、美しい満月の夜。ほんとうに月と縁のあるドラマでした。