主演の二人が物語の背中を押した

また、セリフでは、平安時代の言葉でも現代語でもない言葉使いを研究したそうです。

「1000年前の言葉をそのまま使うとわけがわからないし、現代語でもおかしい。どのあたりを落としどころにするか、中島さんや時代考証の先生を交えて、いろいろなパターンを研究しました」と、大石さん。

「セリフを書くときは、キャストの顔を必ず思い浮かべます。うまい役者さんは、私が脚本を書く前から、私の頭のなかで勝手に動いて、物語をけん引するようなところがあるんですよ。吉高由里子さんと柄本佑さんは、まさにそういう役者さん。お二人はいろんな画を私に見せて、物語の背中を押してくれました」

「道長のセリフはストレートですよね」という岩槻アナの言葉を受けて、「まひろは気難しい人なので、自分の想いを露骨に出さないけれど、道長は素直。私たちのチームのつくった道長は、ほんとに素直ないい人なんです」と大石さん。

従来のイメージとはまったく違う、斬新な藤原道長像が、このドラマの魅力を高めたことは間違いありません。

脚本を書き終わった時点では、「『ああ、長かったなあ』『ゆっくり寝たいなあ』というくらい」で、さほどの感慨はなかったという大石さん。ただし、クランクアップのときには、寂しさがこみ上げてきたそうです。

「このセットはもう壊されるんだな、このチームの仲間と仕事をすることはもうないんだな、と思うと寂しくなったんですよ。あんなに厳しかった中島さんが涙を流して、それにつられてみんな泣いちゃってね……。もちろん、打ち上げのときも寂しかったのですが、(最終回が放送される)今日がいちばん寂しいんじゃないかと思っています」

NHKの美術スタッフの『光る君へ』の仕事を取材した記事はこちら

しんみり語る大石さんの手にはハンカチが。中島さんも「クランクアップのときは、ほんとうに感無量でした」としみじみ振り返ったものの、総集編の編集作業がまだ残っており、寂しさに浸る余裕はまだないとのこと。

このドラマの集大成でもある『光る君へ』総集編の放送は12月29日です。また、その総集編に続いて、本イベントの模様をまとめたスペシャル番組も放送される予定です(12月29日、午後4時3分~23分、NHK総合)。

この総集編と特番で『光る君へ』の世界とも、いよいよお別れ。みなさま、どうぞお楽しみに。