「昔から中国人は、強いリーダーが好きな傾向はあります。広大な国なので、強いリーダーでなければまとめられない、という面も」(中島さん)

 

中国人は強い
リーダーが好き

安藤 中島さんの目には、大統領選はどう映りましたか。

中島 つくづく感じたのは、アメリカも多民族国家でさまざまな考えの人がいて、非常に奥が深いということです。たとえば中西部の「ラストベルト(錆びた工業地帯)」に住む貧しい白人の方々の実感は、私たちにはわかりません。

日本のメディアも取材はしていますが、それでも本当にわずかなことしか伝わっていない。中国もアメリカも同じように、100の事実があるとしたら私たちが知っているのは5か6ぐらいではないかと。

安藤 本当にそうですね。ところで今回の大統領選で浮かび上がったキーワードのひとつに「マッチョ」があると思います。

既成のルールを超えてでも自分の意志を強引に押し通す。多少間尺に合わないことがあってもそのマッチョな強さがブルドーザーのように押して行き、自分たちをどこかへ連れて行ってくれることを「民主主義」自体が求めたのではないか。

渡辺 ここまで分断が進むと、オバマ的な「保守でもリベラルでもなく」というアプローチでは無理だという幻滅があります。むしろ「自分のやり方に従わない奴は敵だ」と言う強権的なリーダーを多くが求めた。

その強引さを「民主主義の破壊」と言う人もまた多い。しかしトランプ支持者からすれば、それは破壊ではなく再生であり、トランプこそ民主主義を回復しようとしている、となるわけです。

中島 お互いに見えているものがまったく違うのですね。

渡辺 ええ。議会襲撃事件を扇動したとか、何万回噓をついたとか、日本から見ていると「なぜあんな人が?」と思う方も多い。選挙前の『日本経済新聞』の世論調査では、日本人の71パーセントがハリス支持でした。日本から見たアメリカと実際のアメリカにはギャップがあります。

中島さんのおっしゃるように、私たちの海外の国への視線には少しチューニングが必要ですね。