どんどん斬りにいく主役?

― 松方さんからお父様の近衛十四郎さんのお話とか聞かれましたか?

 親父は殺陣が一番うまいって言われていたけど、気が短いから、相手が斬ってこないうちから自分から斬りにいっちゃうって。それで早いって言われて。そういう親父だったと言っていました。

『木久扇の昭和芸能史』(著:林家木久扇、林家たけ平/草思社)

― 短気に刀を持たしちゃいけません(笑)。師匠は近衛十四郎さんの映画を沢山ご覧になっていた世代ですしね。

 近衛さんは長いこと脇役だったんですね。市川右太衛門プロダクションにいて、それから戦中は巡業をして、その時に主役の方が先に斬ってきちゃうっていう。普通主役は真ん中に立っているんですけど、どんどん斬っていっちゃう(笑)。

― リストラみたいな方ですね(笑)。どんどん斬っちゃう。でもそれがよかったんですかね。

 そう、ウケたんですね。