安藤 パレスチナの問題についてはどう思われますか?

渡辺 トランプは米史上、もっとも親イスラエルの大統領で、ネタニヤフ首相にとっては心強い存在です。そのトランプは「私が就任するまでにガザでの軍事作戦を終了してくれ」とネタニヤフに電話で伝え、実際、停戦合意は近いとされています。

その一方で、トランプはイランを敵視していますし、イランやロシアに支えられていたシリアのアサド政権は反政府軍の蜂起であっけなく崩壊しました。中東情勢は流動的で、日本の原油価格に影響を与えかねません。

安藤 今、アメリカだけでなく世界中で民主主義のあり方が問われています。12月には韓国で尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が45年ぶりの戒厳令を発令。それに対し深夜にもかかわらず野党議員や市民が国会へ駆けつけ、6時間で事態を収束させるという驚くべき事件がありました。

朝鮮半島問題や、中国・台湾の対立など、アジアにも多くの懸念材料が溢れています。中島さんは25年のアジア情勢の展望について、どうお考えですか。

中島 米中対立が激しくなるなかで、日本の立ち位置は、ますます難しくなっていくと思います。台湾問題もありますし、韓国の情勢も心配です。

韓国では大統領の任期の末期に、必ずといっていいほどスキャンダルが起きたり、逮捕されたりということがあります。政権が代われば、比較的良好だった日韓関係も、再び悪化するのではと思います。

安藤 今回の韓国での出来事は、やはり民主主義とは何かという、手続き論や、基本的な考え方が試されているのではないかと思いました。一見、私たちは民主主義の持つ、手続きの面倒くささを忘れがちですが、そのプロセスこそが民主主義そのものなのだということを、再認識するべき時だとの思いを強くしています。

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