「そもそも僕には目標や展望があったわけではありません。目の前にイベントがあり、それをクリアすることを繰り返してきただけなんです」

自分を信じて険しい山を登って来た

15歳で渡英した僕が、26歳で帰国しKバレエカンパニーを設立して25年。節目に、「この25年を振り返って何を思うか」といった質問をされることが少なくないのですが、振り返るたびにどっと疲れます。(笑)

こんな険しい山を登って来たのか、もう絶対無理、二度と上がって来られないと思う。そもそも僕には目標や展望があったわけではありません。目の前にイベントがあり、それをクリアすることを繰り返してきただけなんです。

運にも恵まれたと思います。帰国後、日本での公演は即日完売。ゲスト出演の依頼も多く、僕の周りにマーケットがあると実感できました。

20代の頃はアイドル的な立場だったと言えるかもしれません。物珍しさからみんなが僕を見てくれて、僕の表現で驚かせて納得させて。あの当時、それがきっかけでバレエを好きになってくれるお客様がすごく増えたんです。

僕はかなり若い頃から、才能とは言いませんが、自分という担保があった。「僕がいいと思うものはいいものであるはずだ」と、信じて疑わないところがあったように思います。

10代、20代の頃は、鼻っ柱が強く、自分への信頼を平気で口にしていましたが、当然、周りを説得することはできなかった。でも次第に自分の経験値が上がり、実績を示せるようになるにつれて、周りが何も言わなくなってきた。