「今回も直感を頼りに、これを子どもたちに届けたいというピュアな気持ちで動きました。願わくば、本作を見た子どもたちがバレエを始めてくれたら最高ですね」(撮影:木村直軌)
バレエ界で活躍を続ける熊川哲也さん。26歳で英国から帰国し、Kバレエカンパニー(現Kバレエ トウキョウ)を設立して以降、現役ダンサーとして舞台に立ちつつ、プロデュース、演出、振付などを手がけ、経営者としても全力疾走してきた。国内での活動を始めて25年が経った今、熊川さんの目に映るものは――(構成:平林理恵 撮影:木村直軌)

イマジネーションをふくらませて

新作バレエ『マーメイド』が、この秋、世界初演の幕を開けました。Kバレエ設立25周年を記念した作品です。

題材にアンデルセンの童話『人魚姫』を選んだのは、僕も50歳を過ぎて、次世代のことやバレエ界のこれからを考える立場になるなかで、子どもたちをバレエのとりこにするような作品を作りたいと思ったからです。

やはりそれなら夢のあるファンタジーだろうと考えた……わけですが、これは後付けの理由のようなところもあって。一番頼りにしたのは直感です。

新しい作品を作るのはとてもお金がかかります。だから世界の名だたる国立バレエ団でも、新作発表は3年から5年に1回程度。僕の古巣の英国ロイヤル・バレエ団だって、在籍した約10年で新作は2回だけだった。

一方、Kバレエは、毎年新作を発表し、攻め続けることでお客様に喜んでいただいてきました。僕はそこに自負があるし、作品作りに関しては勘が働く。

だから、今回も直感を頼りに、これを子どもたちに届けたいというピュアな気持ちで動きました。願わくば、本作を見た子どもたちがバレエを始めてくれたら最高ですね。