そうはいっても、「断る」「断られる」ことにマイナスの感情を抱きがちな人は、まずは「嫌だ」というイメージを変えてみましょう。

実は人がこうした負の感情を抱きやすいのには、脳のしくみが影響しています。私たちの脳の中枢には、「扁桃核」という小さな部位があり、外部から刺激や情報が入った時に、「快・不快」「好き・嫌い」といった判断を瞬時に下しているのです。

これは生命の危機を回避するための大事な機能ですが、「不快」「嫌」といったマイナスの刺激が記憶にも刻まれるため、一度不快と認識したものは以降もそう感じてしまう。しかもその感覚が強すぎると、視床下部にも影響を与え、思考や体調にまで支障をきたすことになるのです。

そこでしてほしいのが、「扁桃核」をだますこと。「断る」「断られる」ことを前向きな印象に置き換えるのです。例えば、私はコンサルティングの仕事をしているのですが、「クレーム」という言葉を聞くと反射的に身構え「嫌だ」という感情が出てきます。

けれど、「クレーム」を「ご意見」と置き換えると、「どんな意見なのか聞いてみよう」と、前向きな気持ちになれるのです。

長年、嫌だと感じていたことを変えるのは容易ではありません。けれど、深く考えず、反射的にマイナスな言葉を前向きな言葉に置き換えるクセをつければ、扁桃核はだまされ、思考や体調への悪影響も防げます。

断る、断られることが悪いわけではありません。「空いた時間で好きなことができる」「ほかの人を誘ったら楽しい時間になった」など、別のいいことにつながる可能性があります。「断る」行為は、チャンスをつかむ好機でもあるのです。