岸本 「政局が混乱する」とも言われますが、一つ一つしっかり議論して決めてもらえるのはいいことですよね。

永濱 特に野党の協力という面では、今回の選挙で「基礎控除の水準引き上げにより、現役世代の手取りを増やす」ことを公約に掲げた党が議席数を伸ばした点に、注目が集まっています。

岸本 最近ニュースでもよく目にする、「年収103万円の壁」のことでしょうか。この額を超えると所得税がかかって手取り収入が減ってしまうので、パート従業員は働く時間を抑えているケースも多いのですよね。

永濱 はい。国は、基礎控除額を引き上げると税収が減ってしまうので、本音としてはやりたくない。しかし、もし実現すれば今まで労働時間を制限していた人は、より多くの時間働けるようになり、収入を増やすことができます。

岸本 「現役世代の手取りを増やす」と言われると、「リタイア世代には関係ないわ」と思ってしまいそうですが……。

永濱 たしかに直結はしませんが、経済環境が悪いままでは、社会保障を持続させるために年金の給付額を減らしたり、介護サービスの内容が抑制されたりする可能性もあります。現役世代の収入が増えて経済が上向きになれば、財政の運営もラクになる。ですから、幅広い年齢の方にメリットがあるのです。