永濱 もちろんお金は家族に残せますが、資産の多い人は相続税も発生します。昨年度の政府の税収のうち、金額の伸び率が最も大きかったのは相続税なんですよ。

岸本 うーん、考えさせられますね。

永濱 お金というのは、使わなければ紙切れやコンピュータ上のデータにすぎません。使ってこそ価値が生まれるものなので、適度に使って今を楽しむことも必要ではないでしょうか。

岸本 好きな物を買ったり、親しい人と食事をしたり旅行に行ったり。趣味にお金を使うのも楽しいですよね。

永濱 そうした消費の喜びを阻んできたのが、「失われた30年」と呼ばれる長期間の景気低迷。国民全体にデフレマインドが浸透してしまいました。それが今、多少なりとも金利が上昇し、実質賃金も上がって日本経済が復活する兆しが見えてきた。そうした状況では、世の中の動きにアンテナを張って前向きな経済活動をした人ほど、その恩恵を受けやすくなるでしょう。

岸本 今日のお話でイメージしたのが、「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざです。社会の出来事は、私たちの生活に密接につながり、影響を与えている。私は日ごろエッセイでミクロなことばかり書いているので(笑)、もっとマクロな視点を持たないといけないな、と。

永濱 とても大事なことだと思います。

岸本 そして、老後を過ごすうえで持っておきたいのは利他の精神だと感じました。自分が得することばかり考えないというか(笑)。そうしないと自分に戻ってくる大きなものを見失いそうですし、人間的にも貧しくなってしまう。

「周りを潤し自分も潤す」感覚を持つことが、これからの時代に必要なのでしょうね。私も新聞やニュースをしっかりと見て、自分ごととして考えていきたいと思います。今日はありがとうございました。