野党の批判と与党のアピール

アベノミクス期の経済への批判として、以下のような数字の出し方をするのは一つの“定番”としてあります。

下図は、2021年に立憲民主党が政策パンフレットに載せていた図ですが、このように、1990年代の「強い日本経済」の時代から、日本では実質賃金が延々と低下してきているが、他の国(特に韓国など)では強く伸びている――これはアベノミクスが亡国政策だったことを証明している――というような議論を聞いたことがあるでしょう。

2021年に立憲民主党が政策パンフレットに載せていた図<『論破という病-「分断の時代」の日本人の使命』より>

一方で、同じ時期の選挙公報として、自民党側は「アベノミクス6年の実績」というウェブサイトを作っています。

自由民主党が作成した「アベノミクス6年の実績」というウェブサイト<『論破という病-「分断の時代」の日本人の使命』より>

ここでは、

・若者の就職内定率が過去最高水準
・中小企業の倒産が28年ぶりの低水準
・正社員有効求人倍率が(2004年の調査開始以来)史上初の1倍超え
・国民総所得が過去最高の573.4兆円

……といった実績がアピールされています。

『論破という病-「分断の時代」の日本人の使命』(著:倉本圭造/中央公論新社)

特にこの若者の就職内定率の大きな改善と、中小企業の倒産件数の低下というあたりは主観・体感的にもかなり民主党時代とは変わった部分で、それが第二次安倍政権以降の基礎的な支持を固める要因になっていたとはよくいわれることですね。