民主党時代の路線を進んでいたら……

民主党時代の路線のまま突き進んでいたら、地方の製造業の蓄積といったものはかなり壊滅的なダメージを受けていたでしょうし、アメリカのラストベルトと呼ばれるような地域が日本中のあちこちに生まれていたでしょう。

もちろん、そちらに進めば今の日本よりも“平均賃金が高い”国になっていた可能性はあります。しかしそうなるためには、今のアメリカが実現しているような、最先端技術分野に膨大な金額を投資し、どこの国にも負けない勝ち筋をオリジナルに切り開き続けることが必須でした。

そのハイリスク・ハイリターンな道を日本は進むべきだったでしょうか?

理屈としてはありえる方向性だと思いますが、一方で当時の民主党は、最先端技術分野の研究費用を「2位じゃダメなんですか?」とか言って削るような方向性だったわけですよね。これでは、最先端技術一本で世界で戦っていく徹底的にオリジナルなビジョンを当時の日本が持てていたとはお世辞にもいえないでしょう。

結局、とりあえず自分たちを安売りする方向に動き、最先端技術分野からは多少脱落気味になってしまったけれど、いちおうまだ世界一の自動車産業を中心とした地方の製造業を崩壊から守り、経常黒字を積み上げ、日本という共同体を必死に守ろうとしてきたアベノミクス期の日本のことを、フェアな目で見て私は責められないと思います。

※本稿は、『論破という病-「分断の時代」の日本人の使命』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
経営コンサル「ホリエモンのテレビ局買収が頓挫したのが、日本経済のターニングポイントと考える人もいるが…」<とりあえずの共通了解としてのテレビ局>の価値を考える
「ひろゆき型ネット論壇」蔓延前まで、インテリが敬意を払いあいながら有意義で含蓄ある議論をしていた…ってホント?経営コンサル「象徴的な事件<高齢者は集団自決するしかない発言>を今一度振り返ると…」
<国を閉ざして昭和の価値観で運営してきた>から日本は衰退した?経営コンサル「犯罪率も失業率も異例に低い日本。一方、グローバル経済をやってきた欧米はといえば…」

論破という病-「分断の時代」の日本人の使命』(著:倉本圭造/中央公論新社)

堀江貴文氏失脚に象徴的な日本の「改革」失敗の本質的な理由や、日本アニメの海外人気が示唆するもの……。

「グローバル」を目指して分断が深まった欧米とは異なる、日本ならではの勝ち筋を見つけ、この20年の停滞を乗り越える方策を提示する。