総務省統計局が公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、日本の総住宅数のうち空き家数は900万2000戸で、過去最多を記録しました。そのようななか、ホテルなどの不動産プロデュース業を展開するオラガ総研代表取締役の牧野知弘さんによると「今後首都圏に<大量相続時代>が到来し、さらなる空き家の増加が予想される」とのこと。そこで今回は、著書『新・空き家問題――2030年に向けての大変化』をもとに、空き家問題の現状と今後について牧野さんに解説をしていただきました。
賃貸用空き家の深刻な問題
空き家戸数900万戸の内訳で気になるのが、賃貸用空き家が約半数の443万6000戸(49.3%)を占めているという点です。個人住宅空き家は新たな社会問題として多くの国民が認識するようになりましたが、賃貸住宅がどうしてこんなに空き家天国になっているのか論じられることが少ないように思います。
特にこれが大都市圏になるほど、賃貸用空き家は深刻な問題となります。たとえば東京都の空き家は89万6500戸(2023年)ですが、そのうち賃貸用空き家は62万9000戸。何と東京都では空き家の7割が賃貸用の空き家です。20年前は46万戸でしたからこの間に17万戸、37%も増加したことになります。
空き家が急増しているにもかかわらず、都内の住宅新設着工戸数は2023年で12万8000戸、うち貸家は7万戸、新設住宅の半数以上が賃貸住宅の着工ということになります。20年前の住宅着工戸数は15万7000戸でしたから、18%しか減少していないことになります。
東京都の空き家数が同期間で37%伸びていることを考えると、貸家ばかり造ることはいたずらに空き住戸数を膨らまし続けているように見えます。