不動産投資ブームに群がる人たち
最近では土地オーナー以外にも多くの人が不動産投資市場に参画しています。富裕層を中心に東京や大阪ではマンション投資が活発です。またビジネスパーソンの間でも不動産市場の好調を見越して、多額のローンを組んで1棟売りアパートに投資、賃貸運用することが流行しています。
東京や大阪のタワーマンション(タワマン)などに投資する層は、外国人と考えがちですが、地方の富裕層も積極的に購入しています。節税対策になるのと同時にマンションの値上がり期待も購入理由となっています。
戦後80年が経過するなかで地方でも一(ひと)財産を成した富裕層が形成されています。彼らのなかには東京に出かけた時の滞在用に買う人もいれば、値上がり益を見越して5年くらい賃貸で運用しておこうなどさまざまな動機があります。
ただ投資額に対して十分な利回りを得るには現在のマンション価格は高すぎると言わざるを得ません。結果として空き住戸のまま放置される住戸が増えています。もちろん外国人投資家が買うマンション住戸も賃貸に出さなければ基本的には空き住戸(二次的空き家)にカウントされます。
ビジネスパーソンなどの不動産投資も活発ですが、ただムードに流されて不勉強のまま多額の投資を行なう事例が後を絶ちません。
数年前の、シェアハウスに投資してまったく利回りを確保できないばかりか業者が倒産するという「かぼちゃの馬車」事件はあまりに有名です。業者や不正融資に手を染めた金融機関は問題ですが、投資する側の中堅ビジネスパーソンの方々の投資リテラシーのなさは驚くべきレベルのものでした。
これからの日本は大都市部に限らず、全国で大量の賃貸用空き家が発生し続けることが懸念されます。さらに懸念されるのがそうした空き住戸が増えることでスラム化が進むことです。これまでの日本では考えられなかった街の光景が現実のものになる日も近いのかもしれません。
※本稿は、『新・空き家問題――2030年に向けての大変化』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
『新・空き家問題――2030年に向けての大変化』(著:牧野知弘/祥伝社)
今後、首都圏に大量相続時代が到来し、さらなる空き家の増加が予想されている。
どうすれば空き家を減らせるのか。空き家になったらどう対処するのか。
空き家を通して、日本社会の「現状」と「近未来」を読み解く。