総務省統計局が公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、日本の総住宅数のうち空き家数は900万2000戸で、過去最多を記録しました。そのようななか、ホテルなどの不動産プロデュース業を展開するオラガ総研代表取締役の牧野知弘さんによると「今後首都圏に<大量相続時代>が到来し、さらなる空き家の増加が予想される」とのこと。そこで今回は、著書『新・空き家問題――2030年に向けての大変化』をもとに、空き家問題の現状と今後について牧野さんに解説をしていただきました。
900万人高齢者のインパクト
現在、首都圏には65歳以上の高齢者が905万人います(総務省「令和2年国勢調査」)。このうち約半数にあたる480万人が75歳以上の後期高齢者です。
首都圏の高齢者数は近年激増しています。2000年には480万人でしたから、20年間でその数は1.89倍になっています。同期間の首都圏人口は東京都が16.5%の増加、首都圏全体では平均して10%程度にすぎませんので、首都圏全域でいかに高齢化が進んでいるかがわかります。
見逃せないのが、高齢者単独世帯の増加です。生涯独身の人もいるでしょうが高齢夫婦のうち片方が亡くなり、高齢者が独居している世帯が多くを占めています。20年間で何と2.5倍(153.7%増)です。後期高齢者単独世帯に絞れば3.3倍(227.2%増)の激増です。
戦後から多くの人を集め続けている首都圏ですが、その世帯構成に大きな変化が生じ始めているのです。
単独世帯と言えば、以前は学生や結婚前の若い社会人の住まいと考えられました。ところが、この20年間の単独世帯の増加状況を見れば、単独世帯全体の増加率(71.1%)をはるかに上回る勢いで高齢者単独世帯が増加していることが鮮明です。【図表1】