下町らしいふれ合いも
3人は経歴もバラバラ。店の隣に息子と住むさいさんは、家業の縫製業を経て57歳から70代半ばまで清掃の仕事をしていた。治子さんは今も縫製の会社勤務で、週末限定で店に立つ。光繪さんは大阪で大手商社に勤務していたが、結婚を機に上京。主婦業のかたわら、ヨガ、社交ダンス、油絵、麻雀などのサークル活動を楽しんできたという。
「私は自宅から店まで片道2時間かかるので、出勤だけで一苦労。バイト代も『経営が軌道に乗るまでは』と、お小遣い程度しかもらっていません(笑)。でも、誰かに必要とされるのは嬉しいですし、あちこち痛くても、店に立つ日は自然と体がシャキッとするんです」と光繪さん。
さいさんも「清掃の仕事は、自転車で転んでケガをして諦めたんです。それでも体が動くうちは働きたいと思っていたので、店に立てて幸せ。お客さんから美味しかったと言われると疲れなんか吹き飛びますし、明日も頑張ろうと思えます。地域の子どもたちや若い方とお喋りできるのも楽しいです」とほほ笑む。
新作パンの開発会議は全員で。味見しながら、どんなパンがいいかを話し合うのだという。自分のアイデアが反映されるなんて、考えただけでワクワクする。
取材を終えて帰ろうとすると、常連さんらしき小学生の男の子が「こんにちは」とやってきた。「あら~、だいちゃん、いらっしゃい」と賑やかに迎える三婆。下町らしいあたたかなふれ合いに和みつつ、店を後にした。