一位になるより難しいこと
とはいえ、必ずしも努力が順当に報われる世界ではない。日々どんなに努力を重ねても、なかなか日の目を見られない人がいる一方、一瞬の勢いで一位を易々と獲ってしまう人もいる。若さや新しい個性で世間を魅了し、あっという間にトップを飾る人はたくさんいるものだ。
しかしもっとも難しいのは、一位になることではない。一位をキープすることだ。
突然、ドラマティックな速度でトップを獲れば、飽きられる速度も同じだけ速い。悲しいかな、ブームとは「はしか」みたいなものだ。急激に上昇したと思ったら、落ちていくときは真っ逆さまに急降下。すぐに誰かに取って代わられ、忘れ去られてしまう。人気なんて、そんな頼りないものである。
だから、心底「いいね」と言われるようになるための本当のスタートは、世間からの注目がいったん離れてからだと思う。僕もザ・スパイダースでひと息に人気に火がつき、それが急激に退潮したあとで、自分について冷静に考えた。僕の目指すべきところは、人気者になることじゃない、エンターテインメントの腕を磨くことなのだと。
若い頃は、なりふりかまわず一位を目指す時期も必要かもしれない。けれど、決してブームに浮かれ、そこに甘んじてしまってはいけない。もし、人気が熱を帯びてきて、その快感に酔ってしまったら、そのうち絶対にダメになる。自分で人気に水をかけ、あえてブームの火消しをするくらいがちょうどいい。