堺正章
堺正章さん(撮影:小川カズ/写真提供:飛鳥新社)
人生の後半戦、「仕事とどう向き合ったらよいか?」「どんな人と関わっていくべきか?」など、生き方について悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そんななか「人生、まだまだ希望がないと張りがなくなってしまう。老化や衰えも客観視して面白がらなければ」と語るのは、司会者や歌手として幅広く活動する78歳・堺正章さんです。今回は、そんな堺さんの初エッセイ『最高の二番手』から、堺さん流の人生訓を一部ご紹介します。

僕が芸能界に長く居続けられた理由

魑魅魍魎(ちみもうりょう)がはびこる芸能界という摩訶不思議な世界で、僕はずっと生きてきた。TV放送がスタートした昭和の時代から、芸能界はテレビとともに勢いを増し、大きくなっていった。

そんな世界でずっと暮らしながら、その中の様子を眺めてきたが、僕はそこでいったいどうやって今まで生き延びてこられたのか。自分でも不思議でならない。

目に見えないなにかに守られてきたのか、ご先祖様が助けてくれたのか。僕にもわからないけれど、ときどき芸能界の後輩たちからこんな相談を受けることがある。

「僕はこれからどの方向に向かっていったらよいのでしょうか」

「厳しい芸能界の中で焦ることはなかったんですか?」

「芸能界で長続きするにはどうしたらいいんですかね」

ぐいぐいと質問を畳みかけてくる彼らには、「おいおい、ちょっと待ってよ。お気楽に見えてもさ、僕だって意外と頑張ってんのよ」などと返してはみるものの、一方で、なんとなくはわかっている。どうやら僕は、恐ろしい芸能界の荒波の只中をふわりふわりと機嫌よく漂っているように見えるらしい――。