苦い経験も糧になる

それでも、アジアの技術を生かした高度な刺繍を施した作品を褒めてくださった方もいましたし、パリコレに出たということで日本での注目度がぐっと上がり、デパートでの扱いも変わりました。

翌年にパリのサン=トノーレ通りに出店する夢も叶えることができ、84年には改革開放路線が始まっていた中国・上海でファッションショーを開催し、テレビ放送までされる大成功を収められた。

『コシノ三姉妹 向こう岸、見ているだけでは渡れない』(著:コシノヒロコ、コシノジュンコ、コシノミチコ/中央公論新社)

中国では反響の大きさに嬉しくなって、打ち上げの場でテーブルの上に乗ってザルを持って踊ってしまったのはいい思い出です。上海市長の「外から新しい、素晴らしい風を上海に持ち込んでくれた」という言葉は、とても励みになりました。

こんなふうに、苦い経験も厳しい目で見られることも、考え方次第で励みにも糧(かて)にもなると思っています。