コンプレックスを美点に変える

私は一貫して、「着る人をいかに美しく見せるか」を大事にして服作りをしてきました。その原点は、変な言い方ですが、私が美人に産んでもらえなかったことかもしれません。

子ども時代は、学校で「おまえはブスや」とよく言われました。そんなこともあって、ファッションの仕事を始めてからは、自分を美しく見せるにはどうしたらいいかを真剣に考えるようになりました。

コシノヒロコ
ローマ・コレクションの「アルタ・モーダ」にて。フィナーレでは拍手が鳴りやまなかった(『コシノ三姉妹 向こう岸、見ているだけでは渡れない』より)

今もデザインをしているときが一番楽しいのですが、デザインしながら考えるのは、「この服、私に似合うかしら」「もっと自分をきれいに見せるにはどうしたらいいんだろう」ということ。

きれいなモデルさんが着なければ映えない服では、多くの人に買っていただけません。美人に生まれなかった私だからこそ、着る人の気持ちを第一に考えるデザイナーになれたのではないかとも思っています。

女性はともすれば、「私は目が小さい」「背が低い」など、容姿に関してマイナス面を探してコンプレックスを抱きがちです。でも実は弱点だと思っているところが、プラスにもなります。

背が低い人は、かわいらしいファッションが似合うかもしれないし、目が小さい人は、メイクとファッションでジャポネスクな美を表現できます。ふくよかな人には、私は「その身体があなたらしさなんだから、そこをもっと生かしましょうよ」と言います。

でもそうした外見よりもっと大事なのは、本質的な個性です。歳を重ねれば重ねるほど、その人の生き方によって培われてきたものが見えてきます。それは、人間性と言ってもいいかもしれません。そうした個性を見ながら、その人に似合う服はどんなものかを考える。それが、私のデザインの基本です。