先入観は持たず、自由な精神で

ファッション史では、85年に中国で行ったショーが「中国最大」と報道されたことを、画期的な出来事として捉えられているようです。

このときは、人民服ではなく初めて背広を着た総書記として知られ、「服装の解放」を提唱していた胡耀邦(こようほう)さんの妻で元紡織部長の李昭(りしょう)さんが全面的にバックアップしてくださったことで実現しました。

1989年、「対極」をテーマに制作した赤と黒のワンピース。襟とカフスは伸ばしたり、重ねたりできる(『コシノ三姉妹 向こう岸、見ているだけでは渡れない』より)

ショーの会場は北京飯店西楼の大きなホール。まだ文革の名残があり人民服を着ている人が多く、電力が不足していた上、当時の中国はファッションショーなどに慣れていない時代で、大変なことがたくさんありました。

モデルも現地の人にお願いしたので、なかなかいい人材が見つかりませんでしたし、ファッションに合うよう髪を切ったら泣かれてしまったりも……。後から思えば、中国の現状をあまり知らなかったからこそ思い切ったことができたのだと思います。調べすぎると、怖気づいたり、躊躇(ちゅうちょ)したりしてしまいますからね。