ファッションの家に生まれた自負
イギリスで活躍しているデザイナーの多くは、有名なデザイナーを輩出してきた大学や大学院を卒業しています。一方私は、ファッションの学校を出ていません。でも、そのことで引け目を感じたことはないの。私は姉ちゃんたちと違って絵を習いに行ったこともないけれど、デザイン画は自然に描けるようになった。
イギリスのデザイナーたちに対しては、「あの人たちと私とでは、持ってるものが違う」と思ってきました。私はファッションの家に生まれて、小さいときからその環境にいたから、まったくそうした環境に身を置いたことがなく、大学に入ってアカデミックな勉強をすることからスタートした人とは、根本が違うという自負がある。
逆に学校に行っていないことが、強みでもあるとも思います。学校ではファッションの流れについても勉強するけれど、そうすると、この色が流行ると翌年はこんな色が流行るといった具合に、ついそのセオリーに当てはめがちです。
でも私はセオリーとは関係なく、自分の感覚を信じて「一発かましたれ!」精神で、「誰も作ったことのない、みんなを驚かせるものを作ろう」と思ってアイデアで勝負してきました。
もちろん、現場で学んだこともたくさんあります。プレスの人から「流行と逆行してるよ。もっと研究したほうがいい」と言われて、自分なりにファッションの流れとはどういうことかを考えたこともある。
ファッションの世界では、常に3年後を考えて作り始めないと間に合わないのですが、3年後に照準を合わせるには、今流行っているものを打ち消さなくてはいけないということにも気づきました。人から教えてもらうのではなく、経験のなかから自分で方法論を見つけて掴み取るほうが身につくし、結果的にそれが力になると実感しています。