デザインを盗用されても
デザインを盗用されたこともあります。ロンドンのファッションウィークでは、全員イギリス人のなかで日本人は私一人。その私のブースに、イタリアからバイヤーが大勢やって来るわけです。
近くのブースのデザイナーが「よく売れてますね」とか愛想のいいことを言っていたけれど、その後シワ加工を真似され、しかもPRの人たちが「イギリス人が初めて開発した」と宣伝したの。
大きな会社に真似されたら、私のカンパニーみたいな小さなところはひとたまりもありません。何万枚も作れるところが、結局ビジネス的には勝利を収めるんです。オリジナルは私だとみんな知っているけれど、真似した技術で有名になっていくデザイナーや、儲ける会社もあるわけです。
でも、それは仕方ありません。だったらもっと新しいことをやるまでです。「まだなんぼでもアイデアあるわ」と気持ちを切り替えて、前に進みます。
これもやっぱり、テニスで培われた考え方なんかな。40対30のマッチポイントで決着がつかなくても、絶対チャンスはあるはずだと信じていたから。そんなとき、わーっとファイトを出すと、ツキが回ってくる。
そういう経験があるから、真似されたときも、「これ、マッチポイントで取られたときの気持ちやな」と思うと、「やったる!」「絶対、負けへんで!」と力が湧いてくる。そうなるとツキが回ってきて、形勢がガラッと変わる。その瞬間が、なんかわかるんです。