一番舞台袖から見ているのが僕

翌年になり、やっと念願かなって舞台に戻ることができました。ただがんの脅威は去ったのですが、後遺症として僕は唾液が出にくくなってしまい、味覚が以前の半分くらいしか感じない体になってしまいました。今でも僕の味覚は6割までしか戻っていません。100%に戻ることはもうないそうです。

でも、その味覚の“6割”に合わせて、病気前の自分と同じ自分ではなく、6割を100%として、今やれることをやろうと思っています。無理をして、できなくて、自分に失望するのは結局僕らしくない。

6割ペースの自分になったら、なぜか以前より周りの普通のおじいちゃんやおばあちゃんとの話が弾むようになりました。僕が実際歳をとったこともあるんでしょうけど、好奇心だけは子どもみたいなところがあるので、昔の話を聞くだけでワクワクしてしまうんです。

この前も地方のスナックで、若い女の子より96歳のお婆ちゃんが気になっちゃって(笑)。その方と昭和のパーマ事情とかオシャレの話を聞いて大いに盛り上がりました。

今年は戦後80年を迎える節目の年なので、今回の公演には80歳以上の方を無料招待させていただくことになりました(ご招待締め切りは終了)。同伴の方1人も無料としましたので、付き添いがてらお子さんやお孫さんなどに来ていただければと思っています。世代を超えて語り合う時間がもたれるといいというのがみんなの願いでもあります。

うちには高校生になる息子がいるのですが、小学校5年生になった年に舞台を観に来てくれました。そうしたら「夏休みの自由研究は特攻隊について調べることにした」と言ってくれたんです。僕の話も聞いて、自分でも調べて、汚い字でしたけど、大きな紙いっぱいに一生懸命書いてくれたことが嬉しかったですね。

そして8年前に舞台を観にきてくださったご縁から、今回さんまさんにコメントをいただいています。さんまさんからは「感動した 実話やから心に突き刺さった これは本物や」という言葉をいただきました。意外と“感動した”とか普段、簡単に言わない人なんですよ、さんまさんって。だからとても嬉しかったですね。自分へのエールとも受け取りました。

ちなみに今度の『Mother』で僕は、特攻隊長ではあるんですけど、出ずっぱりではありません。僕の演技を楽しみにしてくださる方は前半出てこないので「なんだよ!」ってなるかもしれませんが(笑)、後半ぎゅっといいシーンで魅せますので。

僕は出番のない時、いつも袖から舞台を観ています。今年で13年目になりますが、飽きるどころか何度でも泣いてしまう。長い間関わってきたからというより、この作品のことがやっぱり心から好きなんですよね。ぜひ1人でも多くの方に、そして何度でも観に来ていただければと思います。

そして、今回の大病の時、舞台は復帰のモチベーションにもなりましたが、それより、人間いつどうなるかわからない、やれることは今やっておかないと、と気づかされました。大きな岩も、最初は動かないけど、転がり始めたらゴロゴロと行きますよね。今、『Mother』ももう一息のところまで来ているので、僕の命ある限り押し続けていきたいと思っています。

【公演概要】 アース製薬100周年presents 「Mother~特攻の母 鳥濵トメ物語~」
【出演】浅香唯、ワッキー(ペナルティ)、太田博久(ジャングルポケット) 、安藤美姫 他
<配信チケット情報>
料金:税込3,000円
販売期間:2月21日(金)17:00 ~ 3月29日(土)正午12:00
視聴可能期間:3月22日(土)18:00 ~ 3月29日(土)23:59まで
*期間中は何度でもご覧いただけます
配信チケットURL https://airstudio.zaiko.io/item/370197
【公演情報】公式HP http://www.airstudio.jp/index_2025mother.html
公式X https://x.com/mothertomestory  

【主催・企画制作】株式会社エアースタジオ
【特別協賛】アース製薬株式会社
【協力】吉本興業株式会社、鳥濱拳大、ホタル館富屋食堂、赤羽潤、薩摩おごじょ、特定非営利活動法人知覧特攻の母鳥濱トメ顕彰会、NPO法人国際芸術文化交流振興会、劇団空感演人 他