一方、福岡市ほどの広さに約220万人が暮らすガザ地区は、2007年からイスラエルが封鎖し、人や物の出入りも制限される「天井のない監獄」とも呼ばれています。

23年10月7日にガザを支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへ越境攻撃を行い、約1200人の死者が出ました。イスラエルは報復攻撃を始め、これまで1万7000人の子どもを含む約4万7000人の死者が出ています。

海外メディアはガザに入ることができません。そこで私は24年の7月から約1ヵ月、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区とイスラエルで取材し、その映像を『“壁”の外と内』というドキュメンタリー映画にまとめました。

私は新聞社で20年ほど中東を取材し、エルサレムにも駐在しました。今回パレスチナとイスラエルの人々に話を聞き、新たに見えてきたことがあります。

ヨルダン川西岸のヘブロンは、ユダヤ人入植地が町の中心部に食い込み、分断されています。パレスチナ人は「我々は共存を望むが、イスラエルは違う」と言い、ユダヤ人は「彼らは殺すのが好きなのだ。そんな相手と和平は不可能だ」と言います。

私は暴力を肯定しませんが、なぜ、ハマスの越境攻撃のような暴力が起きるのか。背景にあるイスラエルの占領に目を向けなければ、和平への道も見えてこないと思います。