住宅や学校が目の前で破壊され……
私は占領の実態を見るために、ヘブロンの南にあるマサーフェル・ヤッタという地域に行きました。ここではイスラエル軍が「軍事地域」に指定して、村の学校をショベルカーで破壊し、ブルドーザーで住宅をつぶす暴力が続いていました。
加えて、ユダヤ人が「入植地」をつくり、武装した入植者がアラブ人の村を襲撃し、住民に暴力を振るったり、住宅に放火したりしていました。
私が訪ねた村では軍が2週間前に11戸の家を破壊したということで、瓦礫が放置され、軍が私の目の前で家を再建できないようにコンクリート・ミキサーを押収するのを見ました。彼らはパレスチナ人を土地から追い出そうとしているのです。
この地域には暴力で反撃するパレスチナ人の姿はありません。彼らは、「私たちは闘う」と言って、弁護士に相談し、イスラエルの裁判所に破壊停止や損害賠償請求の訴訟を起こしたりしています。
パレスチナ人と言えば日本人には過激派のイメージが強いかもしれませんが、普通のパレスチナの人々の冷静さと根気強さは非常に印象的でした。
この地域の人々は、伝統的に洞窟を住居にしていました。現代では地上に家を建てて住んでいましたが、この数年、洞窟生活に戻る人々が増えています。彼らは「地上に家を建てるとすぐイスラエル人に壊されるが、洞窟なら壊されることがありませんから」と言う。
日本では「ガザでイスラエルのしていることは酷いが、パレスチナ人も攻撃的で乱暴だから、どっちもどっち」と考える人が多いかもしれません。しかし現実は違う。
パレスチナ人の多くはイスラエル占領下で、軍や入植者の暴力に耐えて、生活を維持し、土地にとどまろうとしているのです。