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一見、汚れていないようでも場を整える。禅の世界で掃除を大切にする理由は、「心」にありました(構成:島田ゆかり イラスト:堀川直子)

「掃除道」のすすめよりつづく

「誰かの役に立った」という思いが心を豊かに

それでは、執着をなくすにはどうしたらよいのでしょうか。日本には昔から「見立て」という考え方があります。これは「ものを本来あるべき姿ではなく、別のものとして見る」という茶の湯の精神に由来するもの。割れた茶碗を金継ぎで修復し、命を蘇らせるのは、まさに見立て術です。

「着なかった服でも捨てるのはもったいない」「せっかくいただいたのに、ゴミにするなんて申し訳ない」と感じたら、発想を変えて新しい役割を与えましょう。これも、見立ての一種です。

誰か必要な人に差し上げたり、フリーマーケットで売ったり。「いつか使うだろう」と、手放せない人は少なくありませんが、その「いつか」が来ることはほぼありません。

昨今は災害も多く発生していますので、被災地で役に立ちそうなものを寄付するのもいいでしょう。「誰かの役に立った」「無駄にしなかった」という嬉しさは、何よりも心を豊かにしていきます。