(イラスト:堀川直子)
日頃、みなさんはどんな言葉を口にしているでしょうか。何気なく言っている口ぐせで、人生は大きく変わる、と専門家は指摘します(構成:島田ゆかり イラスト:堀川直子)

脳は現実と非現実を区別しない

身近な誰かについて、「Aさんは強運の持ち主ね」「Bさんに不運なことばかり起こるのはなぜ?」などと感じたことはありませんか? 幸運な人にはいいことが起こり、不運な人にはトラブルが押し寄せる。実は、これは偶然ではありません。そのメカニズムを心理学で説明できることがわかったのです。

リチャード・ワイズマンというイギリスの心理学者が書いた『ラックファクター』という本に、ある実験が紹介されています。

高額宝くじに当選した人や、飛行機事故から奇跡的に生還を遂げた人など、明らかにラッキーといえることが実際に起きた人たちをA群、とりたてて幸運なことが起きていない人たちをB群に分け、ライフスタイルや思考習慣を調べた実験です。

すると、A群の人は次々とラッキーなことが起きていたのです。A群の人に共通する特徴は、「ポジティブ思考」でした。彼らは全員、ものごとを前向きに捉え、日常的に幸せを感じながら生活していたのです。

人は、ポジティブな気持ちになると、脳が幸せホルモンであるドーパミンやオキシトシン、エンドルフィンなどの脳内物質をどんどん分泌します。これは脳の「生理反応」。すると、その脳の反応に呼応するように五感が鋭敏になり、冴えわたるのです。

たとえば、視野が広くなって、今まで気づかなかったものが見えてきたり、聴覚が鋭くなって情報が耳に届きやすくなったり。感覚が冴えている人ほど危険を察知でき、自分が必要としている情報を得られます。

つまり、A群の人たちは幸運をキャッチできる「感度の高い状態」だったというわけです。

さらにおもしろいことに、脳は「現実」と「非現実」を区別できません。たとえば、とても落ち込んでいるときに、気持ちを奮い立たせようと無理に楽しいことを考えたとします。

すると、脳は「ハッピーな状態だ」と判断する。ある意味、脳の誤作動とも言えますが、A群の人たちはこの状態が続いていたのだと推測できるのです。