モヤモヤ血管はほかにも悪さを……
さらにモヤモヤ血管はほかにも悪さをします。
血液の中にあるフィブリンという繊維成分が外に漏れ出してしまうために、モヤモヤ血管ができたところは硬くなってしまうのです。トリガーポイントと呼ばれる、体に「しこり」のような硬い部分が生じてしまい、しかもそこに痛みが出ることをドクターたちはよく知っていますが、その原因のもとになっているのもモヤモヤ血管です。
血管のまわりに繊維成分が漏れてしまうため、そこが繊維化して硬くなります。すると今度は滑らかに動いていたはずの体の膜と膜の間が癒着して、ひきつれ(瘢痕拘縮)を起こすようになり、それがさらなる痛みを生じさせます。本来はゆるゆるとしたファシア(疎性結合組織)が硬くなってしまうのもこのためです。
また、神経繊維の性質として、ゆるゆるした場所ではそこまで過敏な反応はしませんが、繊維化した硬い部分を通り抜ける神経は過敏になることが知られています。
このため、モヤモヤ血管ができて普段よりも硬さが生じている場所は、よけいに痛みを生じさせます。
五十肩がその典型的な症状です。五十肩はモヤモヤ血管が肩の関節にできる病気として今では再認識されていますが、この際に血管が増えるだけでなく、繊維も一緒に増えてしまうために硬くなるのです。
まとめると、モヤモヤ血管は
(1) 神経を一緒に増やす
(2) 炎症細胞や水を外に漏らす
(3) 繊維を漏らしファシア組織を硬くする
などの問題を起こしてしまうため、長引く痛みの原因となります。
※本稿は、『こんなに痛いのにどうして「なんでもない」と医者に言われてしまうのでしょうか』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
『こんなに痛いのにどうして「なんでもない」と医者に言われてしまうのでしょうか』(著:遠藤健司、奥野祐次/ワニブックス)
「痛み」はQOL(人生の質)を下げる大きな要因です。
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