式年遷宮の大きな課題とは
下鴨神社では1036(長元9)年から、21年に一度、式年遷宮(しきねんせんぐう)が行われてきました。戦乱や災害のために期間が延びた時期もありましたが、約1000年にわたって受け継がれてきた重要な事業です。
本来の式年遷宮はすべての建物を新しくするのですが、現在は本殿2棟は国宝、社殿53棟は重要文化財のため、傷んだ場所の修繕だけが行われています。
問題は、その事業費の捻出です。神社の収入の柱は、お賽銭のほかに祈祷、婚礼などの玉串料、お守りやおみくじなど授与費への初穂料です。境内の構造上、難しいこともあり、拝観料を取る神社はほとんどありません。
参拝者の多い有名な神社であれば日々の運営費はまかなえますが、式年遷宮となると寄付金を募るしかありません。修学旅行の中高生や外国人観光客にも人気の下鴨神社は新型コロナウイルス感染症まん延前には年間170万人が訪れたそうですが、それでも事情は大きく変わりません。
2015年に行われた式年遷宮は総事業費約30億円で、国の補助金は8億円。残りは企業や個人からの寄付金でまかなうしかありませんでしたが、寄付金集めに奔走した当時はリーマンショックの影響などで景気が低迷し、集まったのは半分ほどだったそうです。
全国を回って寄付をお願いしても、文化財への寄付が社会貢献になるとは言っても、宗教である神社へはなかなか出せないという企業が以前より多くなっているようで、予算が足りない分の修繕は次の遷宮に回すことにしたという話も聞きました。