好物はカナブン 天真爛漫な食いしん坊
ゴンは健康で、大した病気もせずに育ちました。膝蓋骨脱臼の手術をしたことはありますが、内臓は丈夫でお腹を壊すこともほとんどなし。食いしん坊で、夏場は庭にやってくるカナブンが好きでした。老犬になってもその嗜好は続いたので、最初は「うえぇ」と眉をひそめていた私も、いつしかゴンを応援するように……。
夜、網戸にカナブンが止まると「ゴンちゃん! 来てるよ」などとわざわざ教えていたのです。カナブンには迷惑な話ですが、カナブン猟はわが家の夏の風物詩と言ってもいいものでした。そのゴンに病気の影が近づいてきたのは、15歳の冬のことです。頻繁に下痢を繰り返し、そして回復に時間がかかるようになりました。
その年の3月頃から、ゴンはゴハンを食べる時にボロボロとこぼすようになりました。動物病院に連れて行きましたが、原因はわからず。そして6月初め、ゴンが大きな病気にかかっていることがわかりました。口の中、舌の付け根に近いところにがんがあったのです。もし何も治療を施さなければ、あと1ヵ月の命とのこと。私は突然現れた「期限」に呆然としました。
なんでもっと早く見つけてあげられなかったんだろう。悔やんでも悔やんでも、悔やみきれません。