実感した日米の金融格差

スターバックス事件の翌月、私はコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーから内定を得ることができました。そのとき、夫婦の貯金は、8万円まで減っていました。経済的にもどん底に近づいており、間一髪のタイミングで就職することができました。

マッキンゼーではさまざまなプロジェクトにかかわりました。その中でも、ニューヨーク・オフィスで、10兆円規模の資産運用を行う機関投資家のサポートをした経験が、いまにつながっています。マッキンゼーでの仕事で得た気づきは、「資産が多いか少ないかにかかわらず、資産運用では同じアルゴリズム(数式)が使える」ということでした。

そして、同じ時期に実感したのが、日米における個人の金融格差です。当時、アメリカ人の妻の両親から、「自分たちの資産運用の中身も見てほしい」と頼まれ、見せてもらいました。

出てきたのは、数億円の残高が記された、プライベート・バンクの運用報告書でした。プライベート・バンクは、数億円以上の資産を持っている人しか利用できない、富裕層向けの金融機関です。

妻の両親は、普通の会社員夫婦です。近所の安いスーパーで買い物をして、外食もほとんどせず、車も普通の日本車に乗っていました。質素な暮らしぶりから、プライベート・バンクに資産を預けているとは、まったく想像していませんでした。