イメージ(写真提供:Photo AC)
連載「相撲こそわが人生~スー女の観戦記』でおなじみのライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間勤務しながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります

認知症の祖母の罵声に、家を出た父親

若い知人から祖母が亡くなったと聞いたので、私はお悔やみを言った。すると彼女は、「これで母は楽になり、父は家に戻れます」と、ホッとした様子なのである。

彼女の母は、長い間、寝たきりの夫の母親の介護をしていた。認知症のうえに体が不自由になると罵声がひどくなったそうである。

おむつを交換している彼女の母親に祖母は悪口雑言をあびせ、深夜も止まらない。長期にいられる病院や施設がみつからず、医師が処方する薬も効かなかった。

彼女の父親は会社員で、その罵声により眠れず、アパートに越した。彼女も会社員なので、あまりにひどい夜は、父のいるアパートに行って眠った。

母親は一人で罵声に耐えて、介護を続けていたのである。