その連載『日本美のこころ』『最後の職人ものがたり』が昨年、一冊の文庫になりました。

――煎茶や竹工芸、植物染めなど、生活のなかに息づいてきた日本文化をひとつひとつ取り上げて、魅力や思いを綴る。あるいは、伊勢の神宮の御神宝や皇居の盆栽、ボンボニエールなど皇室ゆかりの文物についても書かせていただきました。

『最後の職人ものがたり』では全国に取材し、烏帽子、琵琶、金平糖など、昔ながらの製法でものづくりに励む職人の皆さまからお話をうかがえたことは、私にとって宝物のような体験でした。

文庫化の折に職人の皆さまの現在のご様子を知ることができ、「後継者が見つかった」という知らせを聞いてほっとすることもありました。

日本の伝統文化は「その家の人が継ぐ」というイメージが強いかもしれませんが、まったく違ったところから弟子入りをしたり、偶然の出会いから始めた方も多かったり、豊かな物語にあふれています。

『日本美のこころ』(著:彬子女王/小学館)