「美術や文化は特別なものとして大切に保存するものではなく、人々の生活のなかに息づく存在であってほしいという思いも持っています」(撮影:三浦憲治)
英国オックスフォード大学で2010年に博士号を取得された彬子女王殿下。ご著書『赤と青のガウン オックスフォード留学記』はベストセラーとなっています。グローバルな視点で日本美術史の研究をされた殿下が今、国内で伝統文化を伝える活動に励まれる思いをうかがいました(構成:山田真理 撮影:三浦憲治)

前編よりつづく

美術や文化は生活のなかにある

英国から戻られて活動の中心が日本文化に向かわれました。何かきっかけがおありでしょうか。

――帰国後、京都の大学で仕事を始めたことから、日本文化を担う方々からお話をうかがう機会が増えました。京都には神社仏閣も多いですし、伝統工芸の職人や作家も大勢いらっしゃる。

そうした方々が口をそろえて「工芸品の需要が減って大変だ」「この道具を作る人がいなくなったら続けていけない」とおっしゃるのを聞いて、自分にできることはないかと考えるようになったのです。

海外で日本美術を研究するうちに、自国の文化なのに知らないことがたくさんあると実感していました。また、美術や文化は特別なものとして大切に保存するものではなく、人々の生活のなかに息づく存在であってほしいという思いも持っています。

研究だけではなく、少しでも多くの方にその意味を伝える活動をしていきたい。そう思っていた頃、雑誌での連載のお話をいただきました。