「病院にアート作品を」という動きは日本にもありますが、善意やボランティアと混同され誤解されていると感じます。地元の名士が寄贈した絵画や、子どもたちがお絵描きした壁を、闘病中に毎日見たいとは思わない。
まずアートとして成立する確かな技術が不可欠で、善意の押し売りや制作者の「我」が見え隠れするのはよくない。ホスピタルアートは患者や家族、そこで働く医療従事者の心によい影響をもたらすもの。そして何より、患者の治療効果を高める薬にならなくてはいけないのです。
私がホスピタルアートに携わるときは、その施設のできるだけ多くの人に、何が好きか、どんなときに穏やかな気持ちになるかを取材します。やはりその地域に根差す伝統や、自然にまつわるものが人々の心に届くのですね。
たとえば高松赤十字病院の玄関には、瀬戸内の穏やかな海と島々、オリーブの花咲く丘を描きながら、海辺をモチーフにした「愛の小径」というシャンソンを絵に表してみました。