適切なアフターフォローがないことも
日本美容外科学会が厚労省の検討会で例示した問題のある美容医療の例をみると、普通の医療とは大きく異なる実態がみえます(表‑15、‑16)。
通常のビジネスではありえない、このような酷い営業などが横行している背景について、日本美容外科学会は「医療機関という信用があり『営業』としてはやりやすい環境にある」などと説明しています。こうした事例は、医療全体、特に保険診療に従事してきた医療従事者たちが築いてきた、医療への信頼に”タダ乗り”している上、それを毀損する行為でもあり、問題があります。

さらに、こうした美容医療によって生じた副作用や合併症の対応・治療において、悪徳な美容医療機関は適切なアフターフォローを提供しておらず、結果としてその対応・治療は、他の一般医療機関、保険診療の世界がカバーすることになります。
これも、「いざとなれば患者は他の医療機関で安くて質の高い治療を受けられる」、という日本の医療制度にタダ乗りしていることになります。実際、こうした合併症などの対応を丸投げされるような酷いケースも増えていることから、こうした美容医療を問題視する声は医療界の中でも年々高まっています。
※1 Kinoshita, S., Wang, S., & Kishimoto, T. (2024). Uneven Distribution of Physicians by Specialty in East Asia. Journal of Korean Medical Science, 39 (12).
※2 ISAPS. ISAPS INTERNATIONAL SURVEY ON AESTHETIC/COSMETIC PROCEDURES performed in 2023
https://www.isaps.org/media/rxnfqibn/isaps-global-survey_2023.pdf
※3 厚生労働省、 『資料1 美容医療に関する現状について』https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001363278.pdf
※本稿は、『現代日本の医療問題』(星海社)の一部を再編集したものです。
『現代日本の医療問題』 (著:木下翔太郎/星海社)
日本の医療は世界的に高く評価されている一方、近年ではさまざまな問題を抱えていることも事実。医師不足、医薬品不足、マイナ保険証、医療費増大、美容医療、終末期医療、医学部受験の過熱……こうした医療の諸問題について専門的な言説は数あれど、今後必要とされる医療制度改革に向けて、国民一人一人が日本の医療を考え、議論するための一助として、包括的な見取り図を整理! 現役医師にして医療研究者である著者が豊富なエビデンスをもとに日本医療の現在地を分析する。