憧れのグループのその人に会うことが叶った
しかしこの時は、すんなりと憧れのグループのその人に会うことが叶った。
まずぼくを出迎えたのは奥様らしき女性だったが、そこから、7、8人のおばさまたちが「20代でマヒナのファンだって?」などと口々に言いながら、その暗がりの空間に集まってきた。
どうやら生徒さんたちのようだ。まるで珍獣発見とばかりにぼくを取り囲んだ。
やがて、何かの用事で外出していたらしい「先生」がのっそり戻ってきた。あぁ、まさに、ブラウン菅やレコードジャケットで何度も眺めていたその顔だ。
「何?マヒナのファンなんだって?」「は、はい……小学生の時からずっと、大好きで憧れでした」「ふぅん。珍しいねぇ。じゃ、そんなに好きなんだったら、歌、習ってみるかい?」「……え?」
まわりのおばさまたちが、その瞬間、歓声をあげた。
インタビューをしに来たつもりが、あれよあれよと、ぼくはカラオケ教室の生徒になっていたのだった。
※本稿は『ムクの祈り タブレット純自伝』(リトル・モア)の一部を再編集したものです。
『ムクの祈り タブレット純自伝』(著:タブレット純/リトル・モア)
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