『漂流教室』『まことちゃん』などの名作を生み出した漫画家・楳図かずおさんが、胃がんのため2024年10月28日に逝去されました。その楳図さんが、2023年に読売新聞で連載していた「時代の証言者/楳図かずお 『怖い!』は生きる力」がこのたび大幅加筆され、書籍『わたしは楳図かずお-マンガから芸術へ』として刊行。生前に楳図さんが記者・石田汗太さんを相手に語った<決定版自伝>から、一部を抜粋してお届けします。
まことちゃん
―「週刊少年サンデー」で連載した「アゲイン」は、楳図キャラクター最大のスターを生んだ。
「アゲイン」の連載中から、元太郎の孫のまことがダントツの人気になりました。まさか、こうなるとは思いませんでした。「アゲイン」を連載しながら、最初のスピンオフ読み切りを「サンデー」増刊号に描きました。タイトルは深く考えず、「まことちゃん」にしました。
―しばらく不定期読み切りだった「まことちゃん」は、「漂流教室」完結後、1976年(昭和51)から「少年サンデー」で正式に連載開始。「B・G(ビチグソ)」「グワシ!」「サバラ!」など、ここから生まれた流行語は数知れず。全国に「まことちゃん旋風」を巻き起こした。
「グワシ!」はものをつかむ時の「ガシッ」という感じから来ています。最初は中指を立てていたんだけど、外国ではタブーだってことが後で分かってびっくりしました。そんなこと、当時の日本では全然知られてなかったから。だからその後、読者の案も入れて改良して、ものすごくやりづらい、あの形になったんです。
まことのぶっ飛んだ行動について、「幼稚園児はあんなにひどいことしない」ってさんざん言われたけど、あの頃の「サンデー」って読者年齢が大学生まで上がっていたんです。ただかわいいだけの幼児じゃ誰も喜ばない。だから思いっきり描きました。