大学時代、私の両親と妹2人が日本に来た際、「私の家族にお会いになりませんか?」と申し上げたところ、「いいですよ」とおっしゃいました。当日、5人で御所に上がったら、ご一家が揃って迎えてくださって。私の妹たちは礼宮さま(秋篠宮皇嗣殿下)や紀宮さま(黒田清子さん)と遊んであちこち走り回り(笑)、母と美智子さまは、ふたりで話しこんでいました。

83年に陛下がオックスフォード大学に留学するご出発の日、私もお見送りに行きました。後ろからとんとんと肩を叩かれたので振り返ると、美智子さまが「アンドルーさん、ちゃんと過ごしていますか?」とおっしゃるのです。そしてニッコリ微笑みながら、「あなたのお母さまから、息子をよろしく頼みますと言われましたから」と。まさか母がそんなことを頼んでいたとは!(笑)

陛下がご結婚されるまでは、御所で一緒にお酒を楽しむこともありました。やはり家で飲むのが一番リラックスできるのでしょう。お酒が強く、飲むと普段以上にユーモア感覚が豊かになられる。28歳で皇太子殿下になられてからは一度だけ、当時の天皇皇后両陛下、紀宮さまもご一緒にお酒を楽しんだこともあります。

陛下、今日は何を話しましょう著:アンドルー・B・アークリー (すばる舎)

ご結婚されて間もない頃、地理研のOB会に雅子さまを連れていらしたことがありました。私は一目拝見して、「わぁ、素敵な方だな」と。陛下がほかの方のところに行かれたので2人きりになってしまい、私が緊張していたら、雅子さまのほうから話題を振ってくださった。本当に知的で、おやさしくて、美しい方です。

陛下は、ご公務とご家族、どちらもとても大事に考えていらっしゃるのだと思います。その次がご自身のご研究。陛下の性格上、何事に関しても徹底的に知りたいとお考えなのでしょう。英語もそうでした。ご公務などでどこかにおでかけになる際は、事前の勉強、準備が万端でないと気が済まないでしょうから、本当に日々お忙しいと思います。

お立場が変わられて、今までのように気軽にお目にかかることができなくなるのは寂しくもあります。でも陛下がご健康で、ご家族が健やかであることが、友人としてなによりの望みです。